溺愛の業火
松沢くんの甘い恋
やっと想いが通じて、公になった関係。
デートがしたいのに、君は相変わらず図書室に入り浸る。
放課後、俺を誘う女の子たちは居ない。
そして周りを警戒せずに、俺は会いに行く。
「図書室では静かにして下さいね。ふしだらは御免ですよ。」
入口で、鋭い視線と低い声で牽制する図書委員。
「ねぇ、君は俺に何をしてくれたの?」
俺が感謝しなきゃいけない何かがあった。
でも。お礼を言うつもりだったけど、天邪鬼な俺の態度に怒ったのかな。
「あなたって馬鹿ですよね。」
冷静な口調で一言。
自分の愚かさに気付いたけれど、それを指摘されると、情けなさを上乗せされたような気分になる。
これ以上、聞いても答えてくれないよね。
「……ありがとう。」
ため息を吐いて、彼は図書室の鍵を俺に渡した。
帰り支度を済ませていたのか、荷物を持って立ち上がる。
俺から視線を逸らし、部屋の奥に居る暁乃に目を向けて。
「伊東さんは、ずっと松沢くんの事が好きだったんです。俺には、見守る事しか出来ませんでした。」
そして去って行く後姿。