溺愛の業火
何も言えなかった。
卑怯な自分に嫌気。
それでも、暁乃(あきの)を好きな気持ちは譲れない。
想いは膨らんで、足りない愛情が満たされることを望む。
それなのに。
近づいた俺を気にも留めず、本を見つめ続ける彼女。
もっとイチャイチャしたいのに。
前の席に座り、読んでいる本を揺らす。
「邪魔しないでください。」
冷たい態度。
「ねぇ、甘いの好きでしょ?」
相手してよ。
イジケると、俺は何するか分からないぞ♪
「食べるのは、好きですけど。」
本に栞を挟んでから閉じ、机に置いて俺に視線を向ける。
ゆっくりとした動作に苛立ちながらも、相手にしてくれるんだという嬉しさ。
単純だよね、俺。
「ふふ。食べるのは、俺かな。」
俺の笑顔に、少し困ったような苦笑を返す。
押せそう?
どこまで強引にしてもいいのかな。
「触れても良い?」
了解も得ていない状態で身を乗り出し、そっと手を伸ばして横髪に触れる。
冷たくてサラサラ。
揺れる一筋を指に絡めると、スルリと逃げていく。