VS‐代償‐

継続


その後の記憶がない。
どうやって帰ったのか、誰かに何を答えたのか。授業の内容さえ。
それでも時間は、いつもと変わらずに過ぎていく。

「くふふ。何か、あったでしょ?」

昼食の時も休み時間も、私に話しかけなかったサユが私を覗き込んで尋ねた。
周りを見渡すと、誰もいない夕暮れの放課後だと気付く。

サユは、ん?と首を傾げてニヤニヤ。

「何も。」

どう説明すればいいのか、分からなかったのもあるけど。
それより自分に近い存在が、私の本音をさらけ出すのが怖かった。
きっと、私の何かが留め気づかせていない感情もある。
それを知るのが、何より恐ろしくて不安になる。自分が崩れそうで。

サユは見透かしたように、口の端をあげて満足そうな笑み。

「くくっ。不器用だなぁ~~。人の事、言えないけどね?」

サユは視線をそらして、目を伏せ気味にした。

「サユ、好きな人いるの?」

私の驚きに、視線を戻して声を出して笑う。

「あはは!私を何だと思ってるの?くふふ面白いな、ホント。」

え?カマ、かけられた!?
体温が上昇して、顔が熱くなる。
居たたまれなくて下を向き、言い訳をしようとしたが言葉が出なかった。

「真歩、私ね。不倫、してるんだ。」

ふ?
顔をあげ、サユに視線を向けた。

「幼馴染のお兄さん、年の離れた小さな私が好きだったって。感情を誤魔化すように、お見合い結婚したの。」

サユは、窓の外を見ながら言葉を続けていく。
私に言っているというより、誰かに聞いて欲しかったのだと理解する。
状況が予測できるけど、真実は違うかもしれない。
だって、それは不器用ではない。

「私もね?子ども心にスキだった。そのスキが、皆と同じ恋の好きに変わったの。想いを告げるべきじゃなかった。」



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