VS‐代償‐

矛盾した感情に吐き気がする。
授業も耳に入らない。視覚も機能が鈍る。

……駄目だ。勝てない。
もう、このまま彼に負け続ける日々を繰り返すのだろうか。

こんな弱い私を。本当の自分を晒せば。
彼は、諦めてくれる?ガッカリして、私をもっと嫌うだろうか。

憎しみ、怒り……彼の秘めた感情は、いつまで……


約束の時間。多分、その場所。
向かう足は重く、整理も出来ない頭の中はグチャグチャで。
泣きそうなのを我慢する。

これが、負けた代償。涼を知ろうとしなかった私の罰。
それでも甘い、小さな炎が灯る。

身体の奥深く。潜んだ黒い感情と同じ位置。
気づきたくなかったソレは、気持ちを高揚させる……

教室のドアを開けると、そこで彼が待っていた。
本を片手に窓際にもたれ、私に視線を向ける。

【ドクッン】

心音が早くなるのが分かる。
それを誤魔化すように、視線を逸らして教室に入った。

「鍵、閉めて。」

今から、異質な空間を味わう。
二人の世界……それは、勝負の代償。

甘さなんて、似つかないはずなのに。
彼の落ち着いたような低い声が、私を酔わすように感覚を麻痺させる。

涼は本を近くの机に置き、姿勢を正し。
私に向かって歩を進めた。

涼の眼……
頬が紅葉し、私の視線に戸惑いを見せる。

どうして、そんな表情をするの?
理解できない。尋ねることも躊躇する。

私たちの関係は今まで、何だった?今は何?


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