VS‐代償‐

苦しい……
これが、負けた私の代償。
涼の気持ちに、応える資格のない。罰。

涼から視線を逸らし、痛みの生じる胸を押さえるように身を固める。

「真歩、いい?今から5分。ふっ……ルールを変更するのは……」

え?
小さな声に、顔を上げた瞬間。身体が覆われる。

抱きしめる涼。
この間と同じように私を包む。

抱きしめる力は、この前より強い気がする。
それでも圧迫はなく、涼の香りに包まれた方が苦しいと思うなんて。

片手が、私の髪を首から流すように触れる。

【ぞくっ】

え?
涼の顔が近づき、私の肩に額をのせた。
熱い息が、服の隙間から胸元に流れ込んでくる。

「やっ。」

思わず、抵抗してしまった。
勝負も代償も。5分の束縛も忘れて。

「駄目だよ。5分は、俺のだ。俺の……そうだね、今以上に嫌えばいい。憎んでも良い。心に、俺がいるなら。それで…---」

“ごめん”

小さく、聞き取れないような声と同時。
首元に涼の口づけ。

「……はぁ……」

苦しい。
何が原因なのか理解できない。思考も鈍る……

涼の手が、お腹に滑る。

「ひゃっ!?」

やっ……嘘、ウソだ!
涼……

涙目になり、必死に腕で胸を押さえた。

「はぁ……お願い。拒絶しないで……5分。勝ったのは俺じゃないか。負けたのは、君だよ?勝負を言い出したのも……真歩……」

そう。負けた……
勝てない涼に、何をされても文句は言えない。

だけど……


< 17 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop