VS‐代償‐

今までに、こんなに泣いただろうか。
溢れて零れ、止めどなく涙が流れ落ちる。自分の中の何かを注ぎだすように。

サユはただ、私のそばにいるだけだった。
何も聞かず、私も何も言わなかった。

私は涼を知りたいと思い、先生の提案を実行に移す。
雪解けを期待して。

新たな道を見つけられる様な気がしたから……


中間と期末の間に設定された実力テスト。
無理なテスト勉強もせず、時間ぎりぎりまで記憶を辿ることもしなかった。

涼との図書室での時間は、積もった想いを整理するために観察した。
普通に交わした会話に、思いを馳せて。

膨らんでいく話題。いつもと違う時間。
思考を覆す。巣食った何かが衰える感覚。

会話が増えるにつれて、涼の表情が昔のように幼さを見せる。
楽しいと感じ、一緒にいたいと願った。

幼い日の想いが、甘く切なく……愛おしく思う。
自分が見てこなかった、見ようとしなかったことが。本当はとても大事だった……

不器用な、バカだった自分を後悔する。


「真歩、楽しいね……」

「……ん。」


そして、私たちの転換点。テスト結果。
涼は変わらず1位。私は順位を下げ。上位10位に入らなかった。

掲示された一覧に、名が載ることは無い。
だから見にも行かなかった。

何だろう。清々しい気持ちを味わったなんて、くすぐったいような不思議な感覚。
当然、先生の呼び出しに教員室へと入る。


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