VS‐代償‐
険しい表情で担任の先生が、進路指導室へと移動するように促す。
個室に移動し、担任の表情が苦笑に変わる。
「オイオイ、一言頼むぜ?提案したのは、俺だが。周りから、絞めを喰らったぞ。」
優しい声色にホっとする。
「すみません。でも、条件はクリアーします。次は、順位を取り戻しますので。……お世話になりました。」
お辞儀をした私に、ニッコリ笑顔。
私の頭に手を置いて、ポンポン。
「行け、青春を謳歌しろ!後悔すんなよ。俺は、悔やんでも戻れなかった。」
先生は私から離れて、窓際に移動した。
切なさの漂う背中……
「失礼しました。」
その背を見つめ、ゆっくりドアを閉める。
【ぐいっ】
え!?
閉めている手が、勢いよく引かれた。
引き寄せる手から、視線を顔に向ける。
表情を見ることなく、強引に引いて行く。
分かる。涼、怒っているんだ。
だよね、勝負を放棄したと思ったかな?
「涼、痛い。付いて行くから、離して……」
皆の視線も気にせず、涼は外に出た。
あの時間に垣間見た、感情の露わになった表情。
「どうして……っ……真歩……」
私を抱きしめ、力強い腕が圧迫を加える。
苦しい。力の加減が出来ていない。
私は、間違ったんだろうか。
「涼、聞いて……」
「嫌だ!」
抱きしめていた腕がゆるんだと思ったら、両肩を押さえ。
切ない表情が一瞬。見えたか見えなかったか。
目を閉じ、私の唇に痛みが生じるほどのキス。
激しい熱が伝わる……