VS‐代償‐
私は目を閉じ、そのキスに応えた。
受け入れたつもりだったのに……
「何?同情……なの?そんなに俺は、哀れかな。君の優しさに触れ……また、思い上がった俺の想いを踏みにじるの?酷い……残酷だね。それでも、この時間に、俺は……俺は狂う。愛しさを自分のものに出来ているんだと……自己満足だ。」
男の人の涙。
私を見つめ、頬を伝う。
言葉を失った。
自分の中に降り積もった想いが、感覚を狂わすのは……私の方が狂っているんだ。
「……真歩……勝負を後悔しない。でも、君に触れるんじゃなかった。こんなに、貪欲になることはなかったはずだから。……次は、勝負……してくれるよね?」
触れるんじゃなかった?涼は、この想いを受け入れてくれない?
続けるんだ、この勝負を……
「……えぇ。あなたから、解放されたいから。」
視線を逸らしたのは、私だった?それとも、涼?
同時だったのかもしれない。
この想いは、溶けて行く……すれ違い……通うこともなくて……