VS‐代償‐
廊下を走り出し、振り返りながら。
「私は、そんな下品じゃない♪」
遠くで、叫んでいるのを無視して。
笑顔が漏れる。
そうね、今の私を築いたのは涼なんだから。責任を取ってもらわないと。
だって、いつだって。住み着いた黒い感情も、あなたを意識した結果。
あなたへの想いは特別。
他には、居ない……
探したけど、どこにもいない。
帰った?幾ら、成績を落としたと言っても。単位は、気にするよね。
どこに……
足を止める。
まさか、勝負に負けたのに。あの教室に、居る訳がない。
代償は……私は……勝負は…………
ゆっくり足が動く。方向を変え、歩き出す。歩みは早くなり、走り出す。
全速で……
息を切らし、ドアに手をかける。
【ガチッ】
鍵のかかった教室。
だよね、カギ……
え?今まで、この部屋って鍵なんか……
「涼?いるの……?」
小さな声で、呼んでみる。
居るような気がする。
「涼?……居ない?私から、去るの?……遅いよね、要らないかもしれない。私の想いなんか。……好き……」
中から音がして、足音が大きくなり。
近づいて来る。
【ガチャッ】
ドアの振動。
鍵が解除され、開くドア。
「……聞こえなかった。真歩、勝負しようか?真歩が、ここから入れば俺の勝ち。」
「ふふ。その勝負、参加するわ。でも……代償は変更ね。5分じゃ、足りないわよ?」
……VS……
勝利の代償を…………
End