VS‐代償‐

頭の中がグルグルなる!
どうしよう聞かれた。私が嫌いだと、知られた。
怖い。彼が、私をどう見るのか。

『どうする?』

私は中学で振ったとき、彼に選択権を与えた。
一緒にいたいなら、あなたの意思に任せると。

無意識で、その時から私の中に特別な感情があったんだ。

違う。否定してみようか。この想いを。
涼を好き?そうかもしれない。
でも、嫌いだと知られたし。私の振り回した行為に、彼も嫌気がしたに違いない。

今なら、まだ繕える。
気持ちを切り替えられる。
きっと次の恋をすれば。

不器用な自分。
区切りをつけたい。どうせなら、彼に一度でも勝ちたい。

これが、すべての間違いだと気付いているのに。同じ事を繰り返すの。
そして戻れない。
あなたへの想いと、触れたところから侵食するあなたの熱が狂わしていくの。

私の培ってきたものを覆す。
偽物の優しさも。巣食った何かも、変化を遂げて私の知らない何かに……


放課後。涼を待ち伏せた。
私の姿に立ち止まり、微笑もなく無言で私の様子を見ている。

心音が、自分でも分かるぐらいに、ありえないほど響く。
口を開いて、声を絞り出した。

「涼、次のテストで勝負して欲しいの。次、私が勝ったらもう近づかないで。」

その言葉を、覚悟していたかのように涼はうなずいた。

「いいよ。」

ホッとして笑みがこぼれた私に。
涼の表情は、悲しい笑顔に変わった。

【ズキッ】
心が痛む。


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