クズ彼氏の甘く危険な呪縛

ピアス

ガチャン――玄関のドアが開いた音で、半分だけ沈んでいた意識が浮かび上がる。
けれど、私はそのまま目を閉じた。
レオが帰ってくる時間は、いつもバラバラで、来ない日もある。時計はもう深夜三時を過ぎていた。
今日は、もう帰ってこない日だと思ってた。そうやって勝手に納得して、やっと眠れそうだったのに。


「ヨリ~……」


聞き慣れた声が、少しふらついている。
またどこかで、飲んできたのだろう。あまりに機嫌の良さに、逆にぞっとした。


「……なぁ、寝てんの?」

熱い手が布団の中へ潜り込んできて、背中にぴたりと、まとわりつくように抱き着かれる。
噎せ返るほどのアルコールと煙草の匂いが、吐き気を襲う。


「ぅ……」


小さく声を上げると、笑い声が背中にねっとりと染み込んだ。


「やっぱ、起きてんじゃん。……ヨリちゃんは俺がいないと、寝れないもんなァ?」


寝れないのは、レオのせいなのに。
でも、そんなこと思っても言えない。言わなかった。
この酔い方はまずい。
怒りでも苛立ちでもない、妙に機嫌が良すぎるとき。
レオが機嫌のいい夜は、たいていろくなことがなかった。
それは、怒鳴るよりもずっとタチが悪い。

いつまでも返事をしない、私にしびれを切らしたのか、手よりも熱い唇が耳を嚙んだ。


「無視してんじゃねーよ」

「……おかえり、レオ」


観念して、レオのほうに体を向ける。
いつもより赤い顔は、満足したように笑った。
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