クズ彼氏の甘く危険な呪縛
台所へ行くと、昨日、手をつけられなかったおかゆの鍋が空になっていた。


「……よかった、食べたんだ」


安心で胸の奥があたたかくなる。
昨日は頑なに食べなかったのに、ちゃんと食べてくれた。テーブルの上に置いていた薬もなくなっていた。
何も言わずに、パーカーまで掛けてくれた。


「馬鹿だなぁ……」


震える声が漏れた。
それが自分に向けてか、レオに向けてか――もうわからない。

けど、嬉しかった。
素直じゃない。可愛くない。不器用で、最低で――それでも、心を満たしてくれる。

笑ってるのか泣いてるのかわからない顔のまま、私はパーカーを抱きしめ続けた。

いつもの匂いが、そこにあった。
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