クズ彼氏の甘く危険な呪縛
空いてる手を床について、頭を下げる。
と同時に、堪えきれない嗚咽が漏れた。
レオが何かを言おうと、はっ、と空気の抜ける音がした。。けど、何も聞こえなかった。
ほんの一瞬、ううん、もっと長いかもしれない。
空気が止まった。
その沈黙が怖くて、それでも撤回はしなかった。頭も下げたままだった。
心が砕けたのは、私か、レオか。
じっとりとした空気が私達を侵す。
「……そうかよ」
落ち着いた声が聞こえる。けど、それが一番怖かった。
レオを、怒らせた。
じわじわと冷静になった部分から冷水をかけられてる気分だった。
レオに逆らったのなんて初めてだから、殴られるかと思った。
だから、立ち上がったレオから思わず身を守るように体を丸める。
「もういい。俺だって、お前なんかもういらねぇよ」
ハッと顔を上げたとき、レオは黒いパーカーを羽織っていた。
「……レオ……」
「別れてやるよ、俺のほうから、捨ててやる……。二度とその顔見せんじゃねぇ」
最後に吐き捨てるように言って、強く扉が閉められる。
まって、といつもの癖で伸ばした手は届くこともなく、落ちた。