クズ彼氏の甘く危険な呪縛
崩壊
「くそっ、くそ、くそ、くそ……!」
怒りに任せて、そこらにあった自転車を蹴り飛ばす。
ガラガラと倒れる金属音が鳴る。けど、少しもスッキリなんかしねぇ。
逆だ。腹の底から、もっと苛立ちが湧いてくる。
煙草に手を伸ばす。
指先が妙に落ち着かなくて、火をつけようとするライターがガチ、ガチと鳴るばかりで火がつかない。
「……ッ」
苛立ちと一緒に、ライターをアスファルトに叩きつけた。
――こんなもん、いらねぇ。
そう思いたかった。
ヨリ――あの女。
今まで、俺がいないと何もできなかったくせに。
ご機嫌取りをして、縋って、泣いて、
「愛してる」って言えば全部、安心したように微笑って、黙って従ってたくせに。
今回に限って、なんで……っ。