クズ彼氏の甘く危険な呪縛
「チッ」
舌打ちをひとつ。すれ違ったやつが肩をすくめる。
そういえば、あいつも……いつも俺の舌打ちに怯えてた。
舌打ちだけじゃない。
俺の態度、機嫌、行動の一つ一つすべて。
何も言わなくても、ヨリは察して、動いた。
だけど、さっきは――
「別れて……っ」
「おねがい、します……」
頭の中で、震えてるような、でも芯のある声が何度も再生される。
痛みを与えても、ヨリは決して頭を上げなかったし、撤回もしなかった。
…………くそ!!
俺に逆らう女なんて、いらねぇ。
こっちから捨ててやったんだ。スッキリした。
――はずだろ?
ヨリじゃなくてもいい。
他にも女はいる。
それに、どうせ……あいつのことだ。
数日もすれば、泣いて、縋ってくるに決まってる。
それが正解なんだ。いつも通り、そうやって戻ってくるんだろ。
だから――
だから、はやくしろよ。俺を待たせんじゃねぇ……。