世界一孤独なピアニストは、恋の調律師に溶けてゆく
翌日も、そのまた翌日も。
璃子はわざと家を片付けず、洗濯物も自分の分は雑に干した。
ただし、篠原の衣類だけはきちんと整えて干す。
キッチンは散らかったままで、鍋や皿がシンクに積み重なっている。

「これでどう反応するか見てやる」

何度も何度も小さな“反乱”を仕掛ける璃子。
でも篠原はいつも無表情で、それをただ淡々と見るだけ。

何の感情も動かず、まるで氷のように冷たいまま。
彼の目には、怒りも驚きも、興味すらも映らない。

璃子の胸の中に募るのは、苛立ちと焦燥感。

「私、こんなにも必死なのに…なんで、何も変わらないの?」

彼の無反応が、彼女の心をじわじわと蝕む。
だが、諦めることはできない。

「まだ、あきらめない。まだ、私の気持ちを伝える方法を探す」

璃子は目の前の無関心に打ち勝とうと、必死に自分を奮い立たせていた。
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