過去を捨て、切子の輝きに恋をする
2.
東京都港区。ガラス張りのオフィスビル。
まだ新しい商社、ZenCraft Internationalの応接室。
真由子が軽く緊張しながら待っていると、ドアが開いた。
背の高いアメリカ人男性が現れた。ジーンズにシャツ、足元は革のブーツ。まるで海外のCMにでも出てきそうな雰囲気だ。
「Yuasa-san? I'm David Armstrong.(湯浅さんですね。私は、David Armstrongです)」
デイヴィッドは、手を差し出してきた。
「It’s a pleasure to meet you.(よろしくお願いいたします)」
真由子は軽く会釈して応じ、握手を返した。
「Formal greetings, huh? I like that. But let’s talk like partners. You okay with English?(正式な挨拶か。それはいいね。でも、パートナーみたいに話そうよ。英語は大丈夫?)」
にこりと笑うと、彼は椅子をすすめた。
「もちろん、大丈夫です」(以下の会話は、日本語表記)
真由子が答えると、彼の目が一瞬、満足げに細められた。
「よかった。じゃあ、ストレートに話そう」
微笑むと、デイヴィッドはすぐに本題に入った。
「日本の伝統を、ただ“守る”ためじゃなく、“成長させる”ためにやってる。
そのためには、“世界に売る”っていう視点が絶対に必要だと、僕は思ってる」
彼の声は力強く、まっすぐだ。
「君の経歴、見たよ。細かいところまでちゃんと見て動ける。英語も使える。何より、“誰かの下で仕事してただけじゃない”って気がした」
真由子は少し驚きつつも、笑った。
「言われたこと以外に手を出すと、怒られることの方が多かったですね」
「でも、それで仕事は回ったんでしょ?」
「……ええ」
デイヴィッドは、満足げに頷いた。
「今、会社はまだ小さい。僕が直接、地方の工房に出向くこともある。通訳も必要だし、現場で即座に判断できる人がほしい。“秘書”って呼び方してるけど、実際には右腕だよ。僕の“相棒”になれるかどうかって話だ」
一瞬の沈黙。
真由子は、椅子の背に軽く手を添えたまま、彼を見つめ返した。
「その役目、任せていただけるなら――やってみたいです」
デイヴィッドは、にっこりと笑った。
「Great. You're hired. Let’s make some waves, Yuasa-san.(素晴らしい。君を雇おう。日本の素晴らしさを世界に広めようじゃないか、湯浅さん)」
まだ新しい商社、ZenCraft Internationalの応接室。
真由子が軽く緊張しながら待っていると、ドアが開いた。
背の高いアメリカ人男性が現れた。ジーンズにシャツ、足元は革のブーツ。まるで海外のCMにでも出てきそうな雰囲気だ。
「Yuasa-san? I'm David Armstrong.(湯浅さんですね。私は、David Armstrongです)」
デイヴィッドは、手を差し出してきた。
「It’s a pleasure to meet you.(よろしくお願いいたします)」
真由子は軽く会釈して応じ、握手を返した。
「Formal greetings, huh? I like that. But let’s talk like partners. You okay with English?(正式な挨拶か。それはいいね。でも、パートナーみたいに話そうよ。英語は大丈夫?)」
にこりと笑うと、彼は椅子をすすめた。
「もちろん、大丈夫です」(以下の会話は、日本語表記)
真由子が答えると、彼の目が一瞬、満足げに細められた。
「よかった。じゃあ、ストレートに話そう」
微笑むと、デイヴィッドはすぐに本題に入った。
「日本の伝統を、ただ“守る”ためじゃなく、“成長させる”ためにやってる。
そのためには、“世界に売る”っていう視点が絶対に必要だと、僕は思ってる」
彼の声は力強く、まっすぐだ。
「君の経歴、見たよ。細かいところまでちゃんと見て動ける。英語も使える。何より、“誰かの下で仕事してただけじゃない”って気がした」
真由子は少し驚きつつも、笑った。
「言われたこと以外に手を出すと、怒られることの方が多かったですね」
「でも、それで仕事は回ったんでしょ?」
「……ええ」
デイヴィッドは、満足げに頷いた。
「今、会社はまだ小さい。僕が直接、地方の工房に出向くこともある。通訳も必要だし、現場で即座に判断できる人がほしい。“秘書”って呼び方してるけど、実際には右腕だよ。僕の“相棒”になれるかどうかって話だ」
一瞬の沈黙。
真由子は、椅子の背に軽く手を添えたまま、彼を見つめ返した。
「その役目、任せていただけるなら――やってみたいです」
デイヴィッドは、にっこりと笑った。
「Great. You're hired. Let’s make some waves, Yuasa-san.(素晴らしい。君を雇おう。日本の素晴らしさを世界に広めようじゃないか、湯浅さん)」