幼馴染のその先へ

ーお前だろー


 

放課後の階段下

 

たまたま備品を返しに行ってた俺は
後輩の女子に呼び止められた

 

「あの…怜先輩」

 

「…ん?」

 

後輩の手が震えてんのがわかった

 

「ずっと前から、先輩のこと好きでした…!」

 

 

完全に告白だった

 

正直、全然予想してなかったタイミングで
思考が一瞬止まった

 

「ああ…ごめん」

 

静かに
短く断った

 

 

その瞬間
少し離れた場所で

 

階段の陰に立つ美奈の姿があった

 

 

…全部見てたんだ

 

美奈は何も言わず
しばらくその場で立ち尽くしてた

 

でも すぐに
何事もなかったように歩き出して、俺の前に出てきた

 

「…付き合わないんだ?」

 

わざと軽く投げるような声だった

 

俺は無言で目をそらした

 

「…別に関係ねぇだろ」

 

「そっか」

 

少しだけ、ほんの少しだけ
美奈の声が揺れてるのが分かった

 

でも俺ももう抑えきれず
言葉を吐き出した

 

「今は…そういう気分でもねぇし」

 

「……」

 

美奈が黙ったまま俺を見つめてた

 

俺は視線を合わせずに
さらに続ける

 

「…つーかさ」

 

「早く彼女作れっつったのお前だろ」

 

 

美奈がピクリと肩を揺らした

 

ほんの一瞬だけ
唇がわずかに震えてた

 

 

けど

 

「…そっか」

 

またその一言だけだった

 

 

その背中が
今まででいちばん遠く感じた

 

“…なんだよこれ”

“全部ぶちまけりゃいいのに
また逃げたのは 俺だろ”

 

自分でもどうしようもなくて
拳をギュッと握りしめるしかできなかった

 

ーーー
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