月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
あの時私は、熱砂の中を一人歩いていた。

「砂漠の民とは思えない服装で、日中だと言うのに、ベールも被っていなかった。観光客が死に来たのかと思った。」

「そうですね。第一印象は本当に不思議でした。」

ジャラールとハーキムさんは、クスクス笑っている。


「……うっ……ジャラールさん……」

ほっとしたのか、一気に涙が溢れ出る。

「どうした?クレハ。」

「うっ、うわわわわっ!」

駱駝の上で、大きな声で泣いてしまった私。

ジャラールさんは、すぐ隣に駱駝を付け、何も言わずに私を抱き締めてくれた。

「大丈夫だ、クレハ。私が側にいる。」

耳元に聞こえた声。

低くて、温かい声。

ああ、間違いなくジャラールさんの声だ。


そして私は、いち早くジャラールさんに伝えなければいけない事があると言うのに、泣きつかれたのか、そのままスーっと眠りについてしまった。


「相当疲れたんだな、可愛そうに。」

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