月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「クレハ、泣くな……」

ハーキムさんが私に手を伸ばした時だった。

「すまない、クレハ。」

先にジャラールさんの右腕が、私を包んだ。

「悪気はなかったんだ。許してくれ、クレハ。」

温かい体温が伝わってくる。


あのジャラールさんが、自分からすぐに謝ってくれるなんて。

「うん。私は、大丈夫です。」

ジャラールさんの胸元からは、あの池で渡された布と同じ匂いがした。

ジャラールさんの匂い。

なんだか、ほっとする。

「もう寝よう。明日は早い。」

「はい。」

ジャラールさんに手を引かれ、木の側の寝床にやってきた。

ハーキムさんが予めおこしてくれた火が、目の前でパチパチ鳴っている。

「クレハは、ここに寝るといい。」

言われた場所は、ジャラールさんの横。

「うん。」

私はジャラールさんに特別扱いされてるみたいで、なんだか嬉しかった。

「ハーキム!いつまで突っ立ってる。こっちへ来い!」

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