月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
“ハーキムは気に入った者がいると、途端に口が悪くなる。だがふとした時に優しくする。”

ジャラールさんが、そう言っていた。


眠れないのかと聞かれ、ううんと答えたのに。

こんな満天の星空を見せてくれるなんて。

ハーキムさんは優しい。


ジャラールさんも、ハーキムさんも、私に気がある?

親友で兄弟のようで、主従関係にあるこの二人に、大切にされている私。

もしかして、私を奪い合ったりしないよね。

しばらく考えたけれど、そんな事あり得るわけないか。


そんな馬鹿げた事を考えてたら、なんだか息苦しくなってきた。

えっ?

なんで急に?

く、苦しい!

助けて‼

目を瞑りながら、手を伸ばした時だ。


「紅葉!」

誰かが私の腕を掴む。

途端に息苦しさがなくなり、一気に鼻から息を吸った。

「ジャラールさん!」

目を開けると、そこには目をぱちくりさせている母親の姿が。

「あら……ごめんなさいね。お母さんで。」

「えっ?」

「あなた、お風呂で寝ていて溺れそうになっていたから。」

あちゃー!

私はお風呂の湯船に浸かりながら、両手で顔をパシッと叩いた。

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