月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「ううん。罪人になれば、即殺されるんだよね。」

「ええ~‼」

ときわも光清も奇声をあげる。

「まさか殺されること、知らなかったとか?」

「それはないと思う。ラナーは小さい時から、宮殿で暮らしていたし。」

「じゃあ、自分だけは殺されないと、思っていたとか。」

「ラナーは、そんな図々しい人間じゃないもん。」

私の答えに、二人はうろうろと動き回る。

「有り得ない。殺されるって分かってて、犯人に脅されているのに、自分がやったって言うなんて。」

光清の言葉に、私はその時のラナーを思い出す。


毅然とした態度で、はっきりと“自分がやりました”と言ったラナー。

ふと、ハーキムさんの言葉が頭の中を過った。

『ラナーは幼い頃より、侍女の心得を教え込まれている。』

高貴な人に仕えるという心構えを、幼い頃から染み込まされたラナー。

何かあれば、自分の命を捨てても構わないと、思っているのかな。

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