月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「ああ。そうだな。」

ジャラールさんも満足げな表情だ。

「この分だとあと1、2時間程で出発できる。明日の夕暮れには向こうに着けるだろう。」

ハーキムさんもジャラールさんと顔を合わせ、大きく頷いた。


「ジャラール王子。」

どこからかヘサーム王子がやってきた。

「出発は翌朝に決まった。」

「えっ!?」

「今夜はゆっくり休んで、鋭気を養われよ。」

そう言うとヘサーム王子は、また背中を向けた。

「お待ち下さい!」

ジャラールさんが引き留める。

「まだ夕暮れにもは時間があります。なぜ軍を進めないのですか?」

ゆっくりと振り返ったヘサーム王子は、こう言った。

「隣国であっても、家族と別れて戦いに行くのだ。命を落とすことだってある。家族と別れを惜しむ時間も必要だ。だから我が国では出発はどんなに早くても、翌朝と決まっている。」

そう言われたら、何も言えない。

返事のないジャラールさんを置いて、ヘサーム王子は宮殿の奥へと行ってしまった。

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