月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「できれば私も、恋人を連れて行きたいものだ。」

そう言うとヘサーム王子は、少し離れた場所にいる女性の肩を引き寄せた。

「あっ、さっきの……」

中庭に一緒にいた奥さんだ。

「へサーム様?」

「冗談だ、タンナーズ。」

でもすぐにその手を離してしまって、自分の駱駝の元へと行ってしまった。


「あなたは、ジャラール王子の恋人なの?」

突然、へサーム王子の隣にいた女性に、話しかけられた。

「えっと……」

「その者は、精霊の使いです。」

迷っている私を見て、ハーキムさんが答える。

「精霊の使い?ごめんなさい。私ったら、変な事を聞いてしまって……」

「いえ。確か、タンナーズさんでしたっけ。へサーム王子の奥様なんですよね。」

「えっ?奥様?へサーム様がそう仰ったの?」

「違うんですか?」

「ええ……私はまだ、妻に迎えられていないの。」

まずい。

私の方こそ、変な事言った。

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