月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「クレハ。気がついたか?」

ジャラールさんの心配そうな声が聞こえるようになったのは、遅れてやってきた兵士達がオアシスに到着してくらいだった。

オアシスの中にある一本の小さな木。

その木の木陰に、私は横たわっていた。

見れば、小さな水辺に交代で兵士たちが、水を浴びている。


「ごめんなさい。私、足手まといになってしまって……」

「何を言うんだ、クレハ。そなたを足手まといに思った事など、一度もない。」

ジャラールさんは、心配そうに私の顔を覗きこんだ。

「ジャラール王子。」

ヘサーム王子がどこからともなくやってきた。

「クレハは、気がついたか?」

「はい。」

「ではすぐに出発しよう。少し遅れをとった。日の入りまでに宮殿の跡地に着けるかどうか、分からぬところだ。」

「待って下さい。クレハは今、意識を取り戻したばかりです。もうしばらくの間、休憩を。」

ジャラールさん。

私の為に。

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