月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
正確に言えば、ザーヒルの後ろ楯だろう。」

「後ろ楯?誰なのだ、その者は。」

「私にも分からぬ。だが、ザーヒルの兵士の口から、『ナーデル様が付いている。』と言っていたのを、聞いた事がある。」

「ナーデル……」

私の頬に布を当てている、ハーキムさんの手に力が入る。

「聞いた事があるか?ハーキム。」

「いや。情けないが、分からぬ。」

ハーキムさんは、私の頬に当てている布を外すと、もう一度水を掛け、私の頬に冷たい布を当ててくれた。

「……ん。」

「気がついたか?クレハ。」

今、正気に戻った振りをした方がいいのかな。

それとも、もうちょっとボーッとしていた方がいい?


「クレハ?しっかりしろ!」

ハーキムさんが、私の顔を上に向かせる。

やばい。

ここは目をぱっちり、開けとくか。

そう思った時だ。

ハーキムさんの唇が私の唇と重なって、私の口の中に冷たい水が、流れ込んだ。

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