月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「まあ、いい。ジャラール様のお気に入りの女に、ハーキムが手を出すとは思えぬ、」

軽く駱駝に乗ったナディアさんは、ものすごく重い表情をしている。

「……ナディアさんは、ハーキムさんを好きなんですか?」

「はああ?」

今度はナディアさんの表情が歪む。

「どこからそんな発想が生まれるのだ。」

どこからと言われても、女の勘としか言い様がない。

「どうした?二人とも。」

「何でもない。」

ナディアさんが、ハーキムさんの周りを、一周した。

「それにしても、油断も隙もない男だ。」

「はあ?俺が?」

「他に男がいるか?この場に。」

ハーキムさんは呆れた顔をしながら、私を駱駝に乗せた。

「ナディア。分かっているんだろうな。」

「何をだ。」

「ジャラール様に余計な事を言ったら、今度の稽古で痛い目に遭うぞ。」

そう言ってハーキムさんは、ヒラリと駱駝に乗った。

< 189 / 354 >

この作品をシェア

pagetop