月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「あんた、碧のオアシスの精霊の使いなんだって?」

その中の目つきの悪い兵士が、私に話しかけてきた。

「到底、そんな風には見えないけどな。」

ゆっくりと、私に近づいてくる。

私はショールを深く被って、知らない振りをした。

「おいおい、無視する事はないだろう。」

急に、その兵士の手が、私の腕を掴む。

「こっちきて、しばらくの間、話でもしようぜ。」

そして、ぐいっと引き寄せられた。

「離して下さい!」

「いいねえ。その初々しい感じ。」

周りの兵士も、私の様子を見て、喜んでいる。


助けて!

ジャラールさん!


「そのくらいにしておきな。」

女性の低い声が聞こえて、私の腕を掴んでいる兵士と一緒に、その方向を向いた。

「タンナーズ……」

「その方は、ジャラール王子の恋人だよ。手を出したら、命はないと思いな。」

舌打ちをしながら、私の腕を離した兵士。


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