月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
その一方で、ときわは私の気持ちを、分かってくれていた。

「好きな人が、今も幸せに暮らしているのか。せめて一目でも見たいって思うのは、当然だよ。」

「ときわ!」

「かなりのめり込んでたもんね、紅葉。砂漠の王子様に。」

この見透かされた感じが、ホントときわだなって思う。


そして、光清の目を掻い潜って、私とときわは図書室へ向かった。

「どの辺?」

「ええっと、京都の本がたくさんある棚の裏側。」

「京都!?」

有り得ない偶然に顔を歪ませながら、ときわはその本を探してくれた。

「背表紙に、アラビア語が載っているの。」

「とにかく、日本語でも英語でもなく、見たこともないような文字を探せばいいんでしょ?」

さすがときわ。

分かってる!

これなら案外、直ぐに見つかりそうだと思ってた時、私の肩と、ときわの肩がぶつかった。


「うそっ……もう終わり?」

私はがっかりして、下を向いた。

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