月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「諦めるのはまだ早いよ、紅葉。」

私はときわの言葉に、顔を上げた。

「あっち半分見たんだから、紅葉はこっち半分見て。」

そう言うとときわは、私の後ろを通って、反対側に来た。

「私はこっち側を見るね。」

「ときわ!」

なんていい人なんだろう。

私はときわに抱きついた。


「ありがとう、ときわ。」

「いいのいいの。もしかしたら、見逃してるかもしれないじゃん?一人より二人でチェックした方がいいよ。」

「うん。うん。」

泣きそうになりながら、私は一旦ときわから離れ、また本棚に戻った。

「よし!スタート!」

「頼むよ、ときわ。」

そして私達はまた、あの本を探し始めた。


アラビア語の本。

アラビア語の本。

一冊一冊、見ていったけれど、あっけなく本棚の端に着いてしまった。

「なかったね。」

「うん。」

その場にしゃがみこむ私に、ときわはそっと横にきてくれた。


< 3 / 354 >

この作品をシェア

pagetop