月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
今、水の中でよかった。

私の涙は、見えないから。

『だからこそ、あの土地を案内したのです。数多いる砂漠の国から、私を知り守ってくれる一族を隠す為に。』

寂しそうに語る精霊に、何も言ってあげられない私を、無力に感じた。

『でも時代は変わります。私に忠誠を尽くさなくても、あの一族は元から滅びたりしない。なのに、私のせいであの一族は他の国に攻め滅ぼされてしまった。』

精霊のせいで?

ジャラールさんのお母さんが、目的だったわけじゃなくて?

『あの若者の母君は、私の巫女だったのです。オアシスの精霊の巫女を手元に置けば、この近く一帯は自分の物になると、根も葉もない噂が立ったのです。その為に、あの若者の母君には、随分辛い思いをさせてしまいました。』

キラキラと光る水の中で、悲しい思いだけが、伝わってくる。

『もう私は、いなくなってもよいのです。その方が、あの若者や巫女である王女にも、災いは起きない。』


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