月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
私の言葉に、精霊からは返事がない。

しばらくして、私の体は浮き始めた。


届かなかった。

小高い丘を越えて、この碧のオアシスを見つけた時の、あの感動を。

直接本人に、伝える事ができなかった。


水面から顔を出した私は、改めて手で顔に付いてる水気を拭いた。

「クレハ!」

私の帰りを待っていてくれたジャラールさんが、水を掻き分けて、私のところまで、迎えに来てくれた。

「どうだった?精霊は、会ってくれたか?」

「うん……」

その後、何も語ろうとしない私を、ジャラールさんは抱き締めてくれた。

「……戻ろう。」

その言葉をきっかけに、私とジャラールさんは、水面から上がった。

私の着ている服を脱がして、乾いた自分の服を貸してくれた。

「今日はここで野宿だ。何か燃やす物を見つけてくる。」

そう言ってジャラールさんは、木の周りをウロウロしながら、燃やす小枝を探していた。

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