月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「……聞いた事があります。サマド王がマリヘフ前王妃を拐ったのは、マリヘフ前王妃の美しさだけではなく、この辺りの一帯を治める事ができるからだと。」

「バカな!」

ジャラールさんは、小枝を折って、乱暴に火の中に投げ入れた。

「一族が滅んでは、元もこうもないではないか!」

滅ぼされた一族の末裔。

その怒りを感じて、火は激しく燃える。

「だから、ジャラールさんにも辛い思いをさせたって。」

「俺が?」

「そして一族が滅んでしまったのも、自分のせいだって、精霊は思っているのよ。ジャラールさんに会わないのも、会わせる顔がないって思ってるんじゃないのかな。自分はもう、いない方がいいって。」

「そんな事……ない……」

ジャラールさんは、両手を膝の上で、強く握りしめた。

「碧のオアシスは、滅んだ砂漠の宮殿の一族の為だけにあるのではない。ここを通る旅人、全ての憩いと命の為にあると言うのに。」

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