月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「よかった。無事だったのか。」
ハーキムさんは、私の肩を強く掴んだ。
「拐われたと聞いて、心配していたのよ。」
タンナーズさんも、嬉しそうに私を抱き締めてくれた。
「そうだ!聞いて!敵はザーヒルだ。クレハ!」
ハーキムさんが、私に気づいて走ってきた。
「クレハ……」
ヘサーム王子は、駱駝の上から、微笑んでくれた。
「クレハ!」
タンナーズさんは、駱駝を降りて、走ってくる。
「ザ―ヒルだけじゃないの!」
皆が、顔を見合わせる。
「ここでのお話は危険です。ジャラール王子。」
ナディアさんが、忠告する。
「分かった。少し待て。」
ジャラールさんは、ヘサーム王子に何かを伝えていた。
ヘサーム王子は、駱駝の上から、私をじっと見ている。
えっ?私?
横のタンナーズさんを見ると、“うん”と頷いている。
そりゃそうだよね。
こんな時に、自分の恋人以外の女に、視線を送るなんて、絶対にないわ。