月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
そして私とナディアさんが脱出したあの小屋へ。

「急ぎましょう。」

ナディアさんが、例の隠し扉を開ける。

さすがにあの死体はなかったけれど、血の跡がどす黒く残っている。

まだぞっとする。

今、生きている人が、一瞬で命が無くなった跡。

「クレハ。」

ジャラールさんが、手を握ってくれる。

「大丈夫だ。クレハの事は、俺が守る。」

「ジャラールさん……」

変わらない、ジャラールさんの優しさと強い瞳。

「とは言っても、拐われたクレハを、助けには行けなかった。」

すると一番後ろにいたハーキムさんが、フォローするかのように、私達の側に。

「そうではありません。クレハが拐われた後、ジャラール様と私とで、途中まで追いかけたではありませんか。」

「途中まで?」

ハーキムさんがそう言っても、ジャラールさんは、下を向いたままだ。

「その後、援軍から戻るように使者が来て、仕方なく戻ったのです。決してクレハを見捨てようとしたわけではありません。」

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