月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「我が王から、刀を下ろせ!」

ジャラールさんが言っても、ナーデルさんは刀を下ろさなかった。

「アリアという女だ。お前が捨てた踊り子が、我の母親だ!」

「アリア……」

王様は少しの間、下を向いて考えていたけれど、その後首を横に振った。

「残念だが、覚えていない。踊り子の事も、アリアという名前も……」

「嘘だ!」

「嘘ではない。神に誓ってもいい。」

王様に完全に否定され、ナーデルさんは刀を落としてしまった。

「そんな……嘘だったなんて……じゃあ、今まで信じていたモノはなんだったんだ。」

力が抜けたのか、ナーデルさんは膝を床に着いた。

「ナーデルさん!」

見捨てておけなくて、止せばいいのに、私はナーデルさんの側に駆け寄ってしまった。

「クレハ……我が聞いた母の話は、何だったんだろう。母は誰との恋話を信じて、あの林の中でひっそり暮らしていたんだろう。」

涙がらに話すナーデルに、何も返してあげられなかった。

< 320 / 354 >

この作品をシェア

pagetop