月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「紅葉。また砂漠の国の事、思い出してたの?」

光清に言われ、涙が滲み出る。

「ごめん。忘れなきゃいけないって、分かってるんだけど。」

光清とときわが、頭を横に振った。

「いいんだよ。」

二人は夢を忘れられずにいる私を、温かく見守ってくれた。

「そうだ。せっかくなんだからさ。紅葉に砂漠の国での出来事を語って貰おうよ。」

ときわは、めちゃくちゃ楽しそうだ。

「はあ?なんで紅葉が辛くなっている原因を、わざわざ掘り出さなきゃいけないんだよ。」

光清は、もうキレ気味。

「バカだね。それで紅葉の気持ちの整理がついて、今よりも元気になるかもしれないじゃん。」

「あっ、そうか!頭いいな、ときわ。よし!紅葉。砂漠の国の話、聞かせてくれ。」

普通だったら、砂漠の国へ行ったなんて、誰も信じないって言うのに。

あたかも私がどこかに旅行してきたかのように、話してくれる。

さすがは、ときわと光清だよ。

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