痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 百合はまた色々思考を巡らせている。

「笹岡さん?」

「はいっ!」

 いきなり背後から声をかけられて百合の体は椅子の上で跳ねた。声に振り向いたら三嶌がいた。

「お待たせ」

「あ……よろしくお願い、します」

「うん。金属出来たしつけていこうか」

 今日も今日とて優しい癒しボイス。耳に触れるだけでうっとりしてしまった。そこに目の前に三嶌がいるという現実によりうっとりして流れるように体が倒れて寝かされるのが心地よい。まさか自分が歯科医院で心地よさを感じる日が来ようとは驚きである。寝かされたまま三嶌を見つめていた百合を三嶌が横目に見つめ返してその色気ある瞳が柔らかく緩む。
 目は口ほどに……とはよく言ったもので。顔の半分はマスクで隠れているのにその瞳からは百合への愛情を感じた。これは自惚れだろうか、自分はとんだ勘違いをしているのでは? そうは思ってもこの夢心地な空間でこの時間に酔っていたい……そう思っていたところに三嶌がサラッと言った。

「すぐ終わらせようね」

「――え」

「つけたら終わり」

(終わり?)

 終わり、その言葉を三嶌から直接聞くのは耐え難いものがあった。他の誰よりも淡々と言う三嶌に百合はサァーッと血の気が引く思いがした。

 三嶌から終わりという言葉を聞きたくない。

「嫌です!」

 百合はいきなり椅子の上から起き上がってしまい吊り下げ式のアームライトに頭を派手にぶつけてしまった。チェアーが揺れて同時に衝撃音が鳴り響く。

「いたぁ!」

「大丈夫!?」
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