痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 百合のその勝手に妄想して暴走する性格も、どこまでもピュアな思考も、そして自分にできる最大で受け止めて受け入れようとするタフなところも。

 もっともっと自分を知ってほしい、三嶌の方がそう思っている。

 そして百合ならきっと、こんな自分を受け止めてくれる唯一の子ではないかと信じたくなっている。

「涙拭いて、先に治療しようか?」

「……はいぃっ」

 ずるずる垂れ流す鼻水を三嶌にティッシュで拭ってもらう百合はまるで赤子のようである。
 そんな見た目ドロドロ間抜けな顔を晒しても喜んで受け入れている三嶌をもっと百合こそ見つめるべきなのに鈍い百合は気づいていない。

 何もかも、ありのままの自分を晒せる相手こそ、きっと自分に合う運命のひとなのに……。

「カチカチして?」

 三嶌の言葉通り、カチカチと歯を噛む百合に三嶌はニコリと微笑む。

「また違和感あったら教えてね」

「……はい」

 そして当然、金属は何の問題もなく無事に嵌まったのであった。
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