痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 通されたそこはスタッフルームだった。

「し、失礼します」

「ちょっとごちゃごちゃしててごめんなさい。今カルテ整理してて……」

 桃瀬がバタバタと周りを整えるので百合は余計に恐縮してしまう。手伝いたい気持ちはあるがなにとしていいかもわからず立ちすくむのみ。ソワソワしているとそこへ電話が鳴った。

「あ! 適当に、そこのソファとかでも座っててください、先生すぐに来てくれると思うんで!」

 またバタバタと受付まで戻ってしまった。仕事の忙しい時間に気を遣わせて申し訳ない、と思うものの呼び出されている手前百合がそんな風に思うのもおかしな話であるが、性格なのだ。内気で人に気を遣う精神の百合なので仕方がない。初めて入った病院の奥、スタッフしか入れない室内をぐるりと見渡す。病院だけではない、奥でもしっかり歯医者独特の消毒液の匂いがする。三嶌は常にこの匂いに包まれて暮らしているんだなと実感して嬉しく感じた。患者だと知り得なかった特別な空間に自分がいれる喜び、不思議だがそれ以上に興奮する自分がいるのだ。

(ここが……先生のお仕事場所なんだな……)

 受付では納まらないカルテが壁付けの収納棚に山ほど詰め込まれている。オープンされてまだ数年と冴子から聞かされていたが人気医院なのは間違いないだろう。治療も対応もなんら文句はない、そこに顔にスタイルまで良いドクターがいるのだ。人気にならないわけがない。
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