痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 どこに行きたいか、そう問いかけたら百合が自分の家に来たいと言うとは思わなかった三嶌は単純に驚いていた。

 まさか百合自らがいきなり自分のテリトリーに踏み込んで来るとは!
 
 いつ、どのタイミングで百合を自宅に連れ込んでやろうかと目論んでいたあらゆる計画はあっさり闇に葬った。

 医師と患者の境界線を越えてしまった、しかも治療途中でだ。三嶌としてはありえない事態であるが、それくらい欲しくなったもの(百合)だった。
 自分のポリシーや概念は崩れたがそんなことも今ではどうでもいい事のように思える。むしろそんなものを覆せるほどのものに出会えた奇跡だと感じている。

 百合は奇跡だ、自分にとって。何にも代えがたく代えられるものではない。

 実際百合は可愛かった。
 結局会えている時間は治療の数時間だけ、診察中は何の因果か口を開けても会話らしい会話はゼロ。触れたところで口の中のみ、治療なので当たり前だが三嶌としては物足りないのは本音である。そんな邪心だらけの三嶌にも百合は健気に治療に向き合い最後はいつも笑顔でお礼を言って帰るのだ。

(可愛い可愛い、ああ可愛い)

 三嶌はあの警戒してる割に無防備でどこか抜けまくっている百合が可愛くてたまらなかった。そして無駄に自分を信用している。それもたまらないのだ。

「先生だから」

「先生なら」

「先生だったら」

 そんなセリフを当たり前に吐くのだ。可愛い以外ない。会うたびに三嶌の方が百合に堕とされていっていた。
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