痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 痛みなんかない方がいい。傷つかないで生きる方法を人はあえて選んでいるはずなのだ。きっと無意識に。

 傷つけてやりたいと、相手に対して狂暴的な感情を持つことだってないことはない。それでも人には理性があってそれの善悪を判断する機能だって持ち合わせている。それらをうまくコントロールできない人間だけが特定の相手や周囲の人間、または自分にだって刃を向ける。

「……痛い思いなんか、させたくないな」

 そのままベッドに連れられた百合は三嶌の言葉に応える。

「痛いままで良かった……歯を抜いてもらう時そう思ってました。このまま治療が終わって先生と患者としても関係が終わるなら……ずっと痛いままでいいって」

 あの時、痛いと涙を流していた百合を脳裏に思い出した三嶌は心の中でため息をこぼす。


(どうしようか……たまらないな)


「先生と出会ってからいろんな場所が痛くて苦しい……でも、どれも狂おしいほど嬉しいんです。だから……」

 百合が伸ばした腕は三嶌の首裏に回されてそのまま抱きついてくる。

「もっとずっと……先生からの痛みを身体に残してほしいっ……」

 それが現実だと感じられるから。夢でも妄想でもない、痛みこそリアルだと百合自身が感じて知っているから。
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