痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 イケメンを目の前にしても百合の気持ちはブレてはいない。むしろ冷静に目の前と向き合っている。

(私はイケメンだからって絶対騙されないけど。こんな顔して油断させてゴリゴリ削って口の中血だらけにして歯を抜いて入れ歯でも入れさせようと思ってるんでしょ)

 心の中で毒づきながらも百合は気づく。

(でももし本当に人気がないではなく休診だったらもう仕方なくない?)

 ここまで来てなんだと思うが、実際帰るしかないなと開き直る気持ちにもなった。

(痛みもあるけど、我慢できないほどじゃないし明日になったら痛みも腫れも引いてるかもしれない。休診なのに予約もしていない私を診てもらおうとか厚かましい。わざわざ診察してもらって入れ歯にされるくらいなら帰った方が絶対いい、そうだよ、もう帰ろう)

 モウカエロウ!

 百合は心の中で都合のいいように整理して帰る気持ちを八割くらい固めだした。

 そんな百合の気持ちを察知したのか、イケメンヤブ医者が病院の奥の様子をうかがいながら言うのだ。

「ちょっと待ってくださいね。センセー」

「え?」

(ん!? この人が先生じゃないの?)
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