痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
なぜこんなことになったのだろう。
百合は診察室の椅子に座って呆然と思う。なぜも何も診察に来たのだからどこもおかしな状況ではないのに現実逃避を始めていた。
(今日が私の命日かもしれない)
ありえない死の覚悟を百合はし始めていた。
「お待たせしました。笹岡さん、担当させてもらいます。三嶌です」
「よ、よろしくお願いします。あの、ご無理を言って申し訳ありませんでした」
「いいえ? 痛いのにそのまま帰らせるわけにはいかないですからね」
とりあえずまずは頭を下げた百合だ。
今日この病院はやはり午後から休診だったらしい。入口の扉に午後から休診します、と紙が掲示されていたのに全く視界に入っていなかった。百合は心底確認を怠ったことを後悔している。
奥から出てきたもうひとりのヤブ……もとい、その医師こそがこの病院、みしまデンタルクリニックの院長だった。
旭――と呼ばれたヤブ医者(誤認)はこの病院の医師ではないらしい。
「あ、違う違う。僕はここの医師ではないんですよー。今日は三嶌先生に少しご相談があってお邪魔してるだけで~」
「そ、そうなのですか……」
受付で問診表を記入した後、その旭という先生が百合のレントゲンを撮ってくれた。その際に旭が世間話のようにそう教えてくれたのだ。
「CTできました。じゃあ先生、俺は今日はこれで」
「うん、ありがとう。あとは森乃院長の意見で決めたらいいと思うよ」
「そうします、ありがとうございました。じゃまた」
旭は百合を横目にちらりと微笑んで軽く会釈をしたら診察室から姿を消した。
CTというのは口腔内全体が撮れたレントゲン写真のことだ。三嶌は旭から受け取ったCTをジッと見つめ、百合の座る位置からも見えやすい斜め前に設置された液晶画面に自分の歯が並んだ横長のパノラマ写真を掲示した。
百合は診察室の椅子に座って呆然と思う。なぜも何も診察に来たのだからどこもおかしな状況ではないのに現実逃避を始めていた。
(今日が私の命日かもしれない)
ありえない死の覚悟を百合はし始めていた。
「お待たせしました。笹岡さん、担当させてもらいます。三嶌です」
「よ、よろしくお願いします。あの、ご無理を言って申し訳ありませんでした」
「いいえ? 痛いのにそのまま帰らせるわけにはいかないですからね」
とりあえずまずは頭を下げた百合だ。
今日この病院はやはり午後から休診だったらしい。入口の扉に午後から休診します、と紙が掲示されていたのに全く視界に入っていなかった。百合は心底確認を怠ったことを後悔している。
奥から出てきたもうひとりのヤブ……もとい、その医師こそがこの病院、みしまデンタルクリニックの院長だった。
旭――と呼ばれたヤブ医者(誤認)はこの病院の医師ではないらしい。
「あ、違う違う。僕はここの医師ではないんですよー。今日は三嶌先生に少しご相談があってお邪魔してるだけで~」
「そ、そうなのですか……」
受付で問診表を記入した後、その旭という先生が百合のレントゲンを撮ってくれた。その際に旭が世間話のようにそう教えてくれたのだ。
「CTできました。じゃあ先生、俺は今日はこれで」
「うん、ありがとう。あとは森乃院長の意見で決めたらいいと思うよ」
「そうします、ありがとうございました。じゃまた」
旭は百合を横目にちらりと微笑んで軽く会釈をしたら診察室から姿を消した。
CTというのは口腔内全体が撮れたレントゲン写真のことだ。三嶌は旭から受け取ったCTをジッと見つめ、百合の座る位置からも見えやすい斜め前に設置された液晶画面に自分の歯が並んだ横長のパノラマ写真を掲示した。