痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
「お席倒しますね。頭楽にしててください」

(ひぇ!!)

 椅子が徐々に床と並行になるように倒れていく。頭を楽にしろと言われても余計に力が入った。久々の歯医者、久々に口の中を弄ばれる恐怖。白い天井を見つめながら百合の体は冷汗で滲んでいた。

「大丈夫ですか?」

 視界に三嶌が映り込む。覗きこまれるような形でさらに百合の体に力が入った。

「だだだ、大丈夫だと思われます」

「久しぶりですか? 歯医者は」

「ははは、はい、数年ぶりになります」

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」

 ニコッと目が微笑んだが全く信用できない。

(どんな先生もそう言って、グリグリギュインギュインして水でガバガバしてくるくせにぃぃ!)

「まずはお口の中チェックさせてください。そのあと治療方法を相談しましょうね」

「は、はい」

 百合の震える声の返事に三嶌はまた優しく目元を緩ませた。その目を見て百合はまた変に体を硬直させた。

(きき、緊張する、いろんな意味でドキドキしかしないぞ、どうしよう)
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