痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 ドキドキの理由はなんとなく気づいているが知らないふりをした。それよりも緊張することが目の前に迫っているのでぶちゃけそれももうどうでもいい域になっている。

「目元は隠さない方がいいですか?」

 口を開けようと覚悟を決めかけていたのにいきなり聞かれて百合は面食らった。

「え、あ……このままでも……いいんですか?」

「笹岡さんが落ち着く方でいいですよ」

「せ、先生は?」

 百合の問いかけに三嶌は少し目を見開いた。

「先生は、どっちがいいですか?」

 先生がタオルをかけようとするのならこの病院のスタイルはそれが普通なのだろう。

 患者みんながタオルで目を塞いでいるのに自分はしたくないなど言ってもいいものなのかとか、先生的に患者に見られながら処置することに抵抗はないのだろうかなど考えてしまって咄嗟に聞き返してしまう。

 そんな百合の心情がどこまで伝わったのかはわからないが、三嶌がふふっとマスク越しで笑った。

「じゃあ今日は初めてだし、見つめ合いながらしましょうか」

「えっ!?」

 百合は思わず変な声をあげてしまった。
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