痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 桃瀬は心の中で百合を絶賛評価中である。

(ぜんっぜん思ってたのと違う! まず(わっか)いな! ん? いくつだって? いくつだ……って二十三!? 若いな! 若いっていうより幼い感じ? おぼこいっていうか、え……先生ロリ趣味だったっけ? メガネでしっかり顔つきはわかんないけど肌が白い……いいな、どこの美白美容液使ってるんだろ、教えてほしい。毛穴も見えないくらいつるつるじゃない? なに、いいな、この肌羨まし過ぎ。なんで? 若いから? 若いからか……羨ましいな、ちくしょう。けど、なんつーか……地味だな、これ)

 桃瀬はどちらかというと派手で自分の身なりに120%ほど気を遣うタイプなので余計にそう感じた。

 百合は地味だった。
 同じクラスにいたら完全に陽キャと陰キャに分かれているだろう。そんな容姿イメージを傍で見つめる香苗も同じように抱いていた。

(このタイプに可愛いってなったってことはもう完全に中身落ちってことよね……先生のなにをくすぐっちゃったのかしら、この子は。パッと目を引くなにかなんかわからないけど……髪の毛がまたすんごい猫っ毛なのねぇ、ふわんふわんして小動物タイプって感じ?)

 桃瀬同様、香苗もまた百合を客観的評価を勝手に行い感じだす心の奥の感情。それは桃瀬も感じていた。

(なんか、なんかわかるわぁ)

(なんかわかるんだよ……わかっちゃうのよこれ)

 二人は思っている。

(先生の加虐心に触れる感じ! あるある!)

 受付にいるふたりにそんな風に見られているとは露知らぬ百合は、「はぁ……」と重いため息をこぼして腫れる右下頬をさすさすと撫でていた。
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