痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 仕事終わりのロッカールームで、香苗は桃瀬に事の顛末を報告していた。

「あれはもう加虐心も煽られてる感じがしたね。先生ってさどっちかって言うと操作型っていうか洗脳型っていうか……」

「サイコパスですよね」

 桃瀬がバッサリと言い切る。香苗もそれをフォローしたいが言葉を見つけられない。穏やかで優しい知的な雰囲気からは想像もつかないほど三嶌は病んでいるらしい。

 百合は三嶌を勝手にサイコパス扱いしていたが、中身は多少違うものの評価はあながち間違っていないようである。

「旭先生から昔の彼女の話聞いたときは度肝抜かれましたよ。太い鎖とガチの首輪あったらしいですよ? ヤバくないですか? 旭先生は笑ってたけど私は笑えませんでしたね」

 桃瀬の言葉に香苗も頷く。

「独占欲は強い、嫉妬深い、自分がどれだけ愛してるか伝えまくってそれが怖くて逃げられるってもはや普通にストーカーでしょ。あれだけのスペック持ってて残念過ぎません? 美形だから余計怖いんですよね、見た目ソフトで優しそうだから騙されて近寄ったら監禁レベルに拘束されるって……捕まりますよ」

 三嶌はまるで澄んだ水面に咲く白蓮のように、美しさで魅了して誘い触れさせたらその底へと引きづりこむ魅惑の花だ。見た目に誘惑されて、甘い声に騙されて……気づいたときにはどこにも行けなくなるように縛り付けられる。

「こわぁ……」

「どの彼女も逃げ出してるっていうもんね……先生そもそも続かないから」

 三嶌の恋愛はどうやら長続きしていないようだ。 

「どうしてかなぁ、伝わらないんだよねぇ……って真剣にぼやいてたことありましたけど、あれ本気でわかってないの怖いですよね」

「そういうところだよね」

 ふたりでうんうんと三嶌の残念部分を嘆いていた。
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