痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 そんな三嶌は寄ってこられるのはダメらしい。

「だから好みはハッキリしてんだよね? 誰でもいいは絶対ないのよ」

「黛様みたいな露骨なのはもう一刀両断ですからね」

「あれはメンヘラ女でしょ? 絶対先生とはうまくいきませんって」

 桃瀬の呆れた声に香苗も納得する。
 実際黛様のラブレターは開封もされずアシスタントたちに手渡されてきた。それはシュレッダー行きという無言の命令である。

 三嶌は興味のない人間には容赦がなかった。廃棄命令のラブレターを香苗と桃瀬がこっそり読んでいることは秘密にしているが多分バレている気がしている。

「そういう意味でも、笹岡様に惹かれたのは予想外でしたよ。先生が患者に手を出すなんか絶対ありえないと思ってましたから」

「そうね、それはそう……」

 香苗こそ一番驚いている。三嶌が職場で自分の感情を主張することこそが意外だと思っていた。

「やっぱり中身ですかね?」

「だと思う。素直で可愛いし……ちょっと変だけど」

「変?」

「先生も言ってたけど妄想癖が激しめっていうか……なんか頭の中では常に暴走してる感じはあったな」

 百合のことを思い出しつつ香苗は口にする。

「聞きたかったなぁ、その変態会話! ギャグじゃないですかぁ!」

 桃瀬がケラケラ笑うが正直あの場にいた香苗は笑えなかった、ドン引きしていたくらいなのだから。

「でも嘘がない感じなのよ。あれが良かったのかもね。先生にはさ、あの真っ直ぐさが可愛かったのかもしれない」

「あ~先生にはなんか取り繕っちゃいますからね~。媚びたりちやほやされたり慣れてるだろうけど、現実感のない人だから妙に気を使っちゃいますよね!」

 もう私たち慣れましたけどね! そんな風に桃瀬がケラケラと笑い香苗もまた呆れつつも頷いていた。
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