痛くしないで!~先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!~
 そんな風に病院では噂の的の百合だが、悩んでいた口腔内の痛みはあれ以来落ち着きだしていた。たまに違和感はあるものの比較的穏やかな生活が送れている。

 あのあと型取りを終えて、軽く全体をスケーリングされて次回の診察予約をしてその日の治療は無事に終わった。痛み止めの処方が出た。痛い時には我慢せず飲むように、三嶌に優しく言われて百合は素直に頷いた。その痛み止めは一度だけ飲んだが、それっきり。たまに鈍痛があっても生活するうえで気になるレベルではなかった。

「良かったね。先生と相性良さそうで」

 お昼休憩に冴子に笑顔で言われて百合は三嶌のことを思い出して少し照れて俯いた。

「カッコよかったでしょ? 優しいし、いい先生じゃなかった?」

「はい……や、やさしかった、です」

「可愛い人って先生言ってたよ、百合ちゃんのこと」

 冴子の言葉に飲みかけていたお茶が喉もとでゴキュッと鳴る。冴子は今なにを言ったか。

「ななな、なんの話ですか? ていうか、冴子さん通ってるんですか?」

「ううん、ちょうど昨日三カ月検診で予約取ってたから歯石取りしてもらってきたよ。先生と百合ちゃんの話で盛り上がっちゃったんだからぁ~」

「……」

 綺麗な冴子は口の中までしっかりとケアしていた。
 病院嫌いで必要に駆られなければ行かない自分とは大違いで尊敬しかない。やはり憧れるだけのひとだ……などと呑気に思いながらも気になるのはそこではない! 

 冴子と三嶌が自分のことで何を話してそんなに盛り上がれるのか。聞きたいけれど聞くのが怖すぎて何も問いただせなかった。

 そしてそんな気持ちは、冴子に自分の邪な気持ちを悟られたくないという理由もあったからだ。
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